冷酒の美味しさがあふれる季節。そのみずみずしさに寄り添うような、薄手の酒器をご紹介します。
酒器を手に持ったときの感触や、お酒を注いだときに器ごしに伝わってくる温度や重さ。そして膨らむ期待。いざ口元に運んだときの口当たりや、口の中にひろがるお酒の香りや味わいを、じっくりと想像してみてください。いずれの酒器も、お酒をより深く味わい愉しむためにつくられています。
今回は薄手の酒器をつくる、5人の作家に注目します。
磁器、銀器、ガラス、乾漆、陶器…それぞれの素材による違いはもちろんのこと、素材をどのように活かすか、どんな物をつくりたいかは、つくり手によって千差万別です。
それぞれの手から生まれ育つ酒器に誘われて、自分らしい愉しみ方をみつけてみてはいかがでしょうか。
軽やかな漆塗りの盆も合わせてご紹介します。
季節の酒器
冷酒を指先に感じられる薄手の酒器
2019.7.26 update
磁器:松本治幸
空にかざすと光も指も透けるほど薄く削り込んだ白磁。磁器とガラスの間を行き交うような新鮮な感覚が、指先に口元に伝わってきます。
銀器:鎌田奈穂
やわらかさや軽快さとともにある凜とした佇まい。金属臭のない純銀を使用し、厚さ0.6ミリの銀板を木槌や金槌で叩いて仕上げています。
ガラス:谷口嘉
素っ気ないようでいてガラスの質感を印象づける表現。口縁を火切りする工程で生じるわずかな欠けを残し、そこに金彩を静かにのせています。
乾漆:安西淳
布と漆でつくりあげる乾漆ならではの極薄な仕上がり。紙のような軽やかさとやさしい手触り、内側に施した箔の揺れ動く表情も魅力です。(箔の仕事:加藤由香子)
海岸で石を拾い、自然界の造形を土に写す、という独自の手法“砂いこみ”から生まれる形。自分の掌に心地よくおさまる丸みを探したくなります。
漆器、陶磁器、ガラス、金属などさまざまな器と相性よく、取り合わせも楽しめる盆。仕上げの漆は木地の透け具合やマット感が凜としつつも穏やかです。