透けるほどに薄い、ガラスのような磁器
滋賀県栗東市で、白磁と黒磁を焼いています。白磁の盃は、手に持ったときに、その指先が透けるほど薄いものです。皆さんがふつうにイメージする白磁とは少し違って、ガラスと白磁の中間くらいの感じです。口当たりも違うと思います。平盃、ぐい呑み、碗型、形も大きさもいろいろで、僕はちょっと大きめのぐい呑みを使って、辛口の冷酒をスッとのむのが好きなので、自然と大きめのものをつくっていますね。
薄くつくり始めたきっかけは、持ったときの感覚ですね。だんだんと薄くなって今に至っていますが、透ける感覚よりも、持ったときの感覚で削り終えることの方が多いんです。高台も底がフラットなので見た目にはわかりにくいですけれど、高台の内側を空洞につくっていて、さらに軽さに一体感が増した気がしています。
それともうひとつ、薄くすると、焼成のときに歪んだり、動いたりするところが面白いんですね。ふつうはリスクととらえるかもしれませんけれど、僕にとっては興奮する出来事です(笑)。少し不安になるくらいがいちばん心地良くて、形も質量も、自然とそういうふうになってしまうんだと思います。
もともと陶芸に興味を持ったのは、高校生の頃にテレビで窯焚きのシーンを見たからです。焼いた器というよりも、窯で焼くということそのものに惹かれたんだと思います。最初は電気窯から始まって、ガス窯も使い始めて、でも、薪窯は目の前で薪が燃えて焼かれていくというリアリティがあって、僕にはしっくりくる焼き方だったんですね。それで、ずっと薪窯でも焼いていきたいと思って、今も灯油窯、ガス窯、薪窯で焼いています。
土も最初は陶土を使っていたんですけれど、磁土の方が不純物が少なくて、焼きがそのまま直接出やすいというか。陶土は土の個性が強いので、焼きをダイレクトに生地に出すんだったら、磁土の方がいいのかなと、思ったというよりは自然と感覚的に磁土になったんでしょうね。
白磁で薄くつくるうちに、バリエーションがほしくなって黒磁もつくり始めました。白磁に鉄を混ぜていろいろ実験をして、自分のほしい黒を出せるようになって。でも、ふつうのマットでは物足りなくて、灰をかけて独特の質感を出しています。黒は好きな色で、自分の服も黒色ばかりです(笑)。
白磁も黒磁も、今つくっている物は、一つ一つ丁寧につくっていかないと出来上がらないんです。ちょっとずつちょっとずつ進化してきて、感覚的に薄くなってきたように思います。削りの作業はいっぺんにたくさん削れなくて、少し削ったら乾かしてまた削るという感じです。高台づくりも、取り付けるときに筆を使うので、その筆跡を乾いてから削っています。