谷口 嘉

Interview

Yoshimi Taniguchi

Dec, 2018

Interview

透明なガラスがたたえる、繊細な揺らぎ




ガラスは軽くて繊細なもの、儚いものというイメージが僕にはあって、それをあまり邪魔しないような素っ気ないものをつくりたいと思っています。

“無色透明なガラス”を使って器をつくっていますが、透明なガラスにはよく見ると少し緑っぽかったり黄色っぽかったりするものもあるんですけれど、僕はほぼ色のついていない透明なものを使っています。お酒は、銘柄によって微妙に色合いや濁り具合が違いますよね。お酒を注いだときに、それぞれの違いが見やすくて、そこを楽しめるというのは透明なガラスの良いところかなと思っています。


今は、全体に均一に近い薄さに仕上げた物をつくっていまして、もちろん器の場合は薄すぎると使い勝手がよくないので、その辺りは考慮しながらガラスを扱っていますが…。そういう物をつくるには型吹きはつくりやすい技法だと思っています。僕の場合は、型はコンクリートなどでつくっていて、型に使う物の表情をガラスが拾うことで、ちょっと揺らいだようなテクスチャーになっています。それが少しアンティークっぽい風合いというか、きれいすぎないガラスの表面という感じで、そういうのが良いかなと。



製作工程として、型吹きしたガラスを火切り(傷をつけてそこをトーチで炙って割る)をして形を取り出し、断面を削るというのをやっています。その断面というのが、酒器や皿の縁になるので、この断面=縁の処理をどうやって仕上げるか、ということはずっと考えてきて、最終的に金彩に落ち着きました。









ガラスは切ったり削ったりすると、その部分に小さな欠けが生じるんですね。もちろん欠けないように仕上げることもできるんですけれど、僕は欠けた部分を少し残すことで、それがガラスらしさとして見えればと思っています。でも、ただ欠けたままでは本当に割れて欠けているだけに思われてしまいます。僕は金彩をあえて欠けたところに入り込むように仕上げることで、たとえば金継ぎしたときの金の入り方のような感じになるといいかなとか思いながら、縁の仕上げをしています。縁にマットな金彩を施すことによって、器自体がちょっと華やかな見た目に。そうかと言って金ピカな派手さとは違う、僕の思うガラスの透明さとか軽さや繊細さに寄り添う雰囲気になっていると思っています。






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movie 谷口嘉

year:2019 time:3.16min produced by filament movie