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酒肴歓談

篠原敬(陶芸家) × 櫻田博克(櫻田酒造)

@ 櫻田酒造/珠洲

2022.6.14 update

漁師町の小さな酒蔵


櫻田
深夜12時になると、漁師さんたちが一斉に港を出て行くんですよ。


篠原
舟の音がね、どどどどって。自分の好きな漁場に向かって行く。


櫻田
レースですよ。皆さん最新鋭の機械やエンジンを付けたり、競うように馬力を上げたりして。
でも、海が荒れているとね、そういう音はしないですから。ああ、今日は漁に行かんかったって。だから音が聞こえると安心するんです。今日は行けた、よかったよかったって。


篠原
「初桜」は地元消費が多いでしょう? 特に蛸島の人たちに好まれているから。やっぱり蛸島の人たちの酒の嗜好は甘いのが好きなのかな?




櫻田
うちの酒も少しずつ変えて、少しずつ辛くなってはきているんですけれど、昔は本当に能登の酒は甘くて。やはり重労働とかの後に、甘いお酒が好まれたということです。甘いお酒を手に持てないくらいの熱燗にして、「うわー熱!」とか言いながらカッと飲む。


篠原
漁師さんってそういう飲み方なんだ。酒の肴に、刺身をよく食べるよね。


櫻田
この辺は漁師町だから、旦那さんが魚をさばける人も多くて。家庭でも刺身は旦那さんだけがさばくとか。まあ、とりあえずぶつ切りにして醤油つけて食べたり。醤油も甘いですけどね。


篠原
そう、能登の醤油は甘い。それに慣れるとしょっぱい醤油がダメになるよね。


櫻田
漁師さんに魚をたくさんいただくので、干物とかも自家製で作って。小さい鰯とか干物にしたものを炙ったり。ちょっと塩辛いんですけれど。


篠原
酒が進むよねぇ(笑)


櫻田
それでクッと、クッとねぇ(笑)。集まってはちょっと炙って飲まれてますね。美味しそうに飲んでますわ。


篠原
季節になると、鰤も大根おろしで食べるよね。わさび醤油じゃなくて。


櫻田
そうそう、大根おろしともみじおろし。


篠原
うちはちょっと柚子を搾ったりもする。脂のこてこてにのった鰤なんて、醤油とわさびではたくさんは食べきれない。昔は大量に捕れたから、がぶがぶ食べるには、大根おろしがさっぱり食べられてね。


櫻田
そうすると無限に食べられます(笑)。熱燗と合わせると美味しいですよね。


地元の酒を地元の器で


篠原
やっぱり地元の酒って愛着あって。僕は「初桜」を燗で飲むのが好き。大体35度に設定して飲むの。ちょうど人肌行くか行かないかくらいで。
「大慶」もそのまま飲んでもやわらかいかもしれんけど、湯燗して、ちょっと人肌ぐらいにするともっとやわらかくなるね。




櫻田
そうなんです。お店によっては大吟醸を燗するなんてもったいないと言われるところもあるけれど、実は美味しい。特別純米酒もぬる燗とか美味しいですよね。


篠原
人肌よりももうちょっと熱いくらい?


櫻田
ぬる燗くらいが私は好きですね。それを珠洲焼の器に入れてね。ゆっくり飲むといいんですよね。「初桜」(本醸造)はもうちょっと温めた方がいいかな。


篠原
昨日は、湯燗して飲んだのよ。


櫻田
ああ、良い感じですねぇ。珠洲焼は奥が深いって言いますか…珠洲焼のぐいのみで飲むと絶対美味しいなと思いますしね。
珠洲焼は復興して40余年ですか。確か私が小学生の頃に陶芸センターが出来て。高校とその後、東京に行ってたんですけれど、帰ってきたら珠洲焼はすごく広まっていて、珠洲焼資料館とかも出来てたり。


篠原
蛸島出身の能村耕二(のむらこうじ)さんという先輩が、一番最初に珠洲焼の復興に携わった人で。


櫻田
最初は能村さんでしたね。


篠原
その後に中山達磨(なかやまたつま)さんが加わって。今では珠洲の各家庭に、珠洲焼は行き渡っていて。


櫻田
退職祝いとか、何かのお祝いとかの記念でもらったり。どの家庭にも必ず何かあって。こういうのいいですよね。


篠原
やっぱり地元の食材で地元の酒で地元の器で飲むというのは、最高の幸せだよね。







灰黒の焼締 珠洲焼 篠原敬
酒の器 _ 2022. 7.1㊎ 7.2㊏ 7.4㊐  12:00 - 18:00
花の器 _ 2022. 7.8㊎ 7.9㊏ 7.10㊐  12:00 - 18:00
*両会期とも皿や鉢など日常の器も並びます
https://cotomosi.com/cotomosinokai_009.html